楽器によっては奏者を選ぶという恐ろしい真実。それもいい楽器は特に!
今までも、薄々はそうだよなあ、とは感じていましたが、このところ多くの方にいろいろな楽器を試奏していただく機会に恵まれ確信に変わりました。
実は、先月とあるいかがわしいイタリアンを仕入れました。バイオリンなんか仕入れる気はなくて行ったロンドンだったのですが、ふと見てどうしても買わずにいられなくなってしまったというものです。それも、買うときにちょっと弾いてみて、全然ならないな、と思ったのになにか魔物にでも取りつかれたようにどうしても買うべきだという思いを振り払えずに買ってしまったのです。
そして、セットアップなどをやり直したけれど、やっぱりならない。音大生やら先生やらに試していただいたのですが、どなたも音はいいけど弾きにくいし音量もない、と口をそろえて言います。それでも、私の第六感は絶対この楽器には何かあると耳元でささやき続けます。
決して安い買い物ではなかったこともあり、日本の調整の神様に助けを求め色々助言をいただきました。といっても劇的に変わるわけではなく。
その後ちょっと閃いてこれは、あの、いい楽器に限って奏者を選ぶっていうパターンではないんだろうかと思い始めました。そこで、結構なプロ奏者に、いい楽器だと思うんだけど、全然音でなくて、楽器なのか奏者なのかわからずお手上げ、と泣きついてみました。そこは、一流演奏家、今自分はホリデーだけど、知り合いに行ってみるように言ってあげるといって他の演奏家を派遣してくれました。
そして、彼女が弾いたら、まったく別の楽器です。大音量でどんどん演奏が広がる深みがあります。そして彼女も開口一番。
音量大きい!すっごく簡単に弾ける!こんな簡単に弾ける楽器、お友達のガダニーニ以来!という、信じられないポジティブな感想をもらえたのです。
やはり、私の第六感は正しかった。ちょっとただものではない楽器と思ったのはその通りでした。
今までも、オールドイタリアンやオランダのヤコブスといった楽器でもこういったことがありました。
多くの音大生にあれはならないよね、と言われた楽器が格段に上手な奏者が弾いたとたんに全く別物になって生き生きとなりだしたということが。
弾きこなせたらすごい楽器やっぱりあるんですね。そして、残念ながら音が出せるかどうかは、本当に奏者にかかっていると思います。
このイタリアンと一緒に皆さんにモダンフレンチを比べていただいたのですが、この彼女以外は全員、フレンチのクオリティー、音量、音色、音の幅、皆がほめたたえました。でも彼女が弾くと同じように素晴らしいんだけど、イタリアンの音の幅や芯の通ったなり方に比べてフレンチは安っぽく聞こえてしまいました。
そして、多分、私だけじゃなくて多くの方が思うであろう、奏者を選ぶ楽器を買ったらいつか弾けるようになりますか、という質問。正直わかりません。多くの方は、特にアマチュアレベルだと手に余ると間違いなく後悔します。子供さんなんかだと、たまたまそういう楽器を親が購入して弾いているうちに楽器に合わせて弾けるようになっていたなんてケースも見ますが、正直、自分で予算を決めて買える年齢からでも弾きこなせるようになるのか、分かりません。
ちなみに、このイタリアンは、調整のために散々弾いていたら、私でもなんとなく音量出せるようになってきました。これは、私の絶対この楽器はすごい楽器だから出るはずだ!という執念もあったと思います。ですが、普通の音楽家で色々な楽器を手にした経験もない場合、こういう確信を持つことはないでしょうし、難しかったかもしれません。’
ただ、ある程度の奏者だと楽器に合わせたっ弾き方ができるようになるものです。もし、先生が弾くとすごい楽器なんだけど自分が弾くとただの弦を張った箱、なんて楽器があったら半年とかの限定付きで試してみるのもいいかもしれませんね。
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Takashi Ishizawa (Tuesday, 07 August 2018 15:05)
セレナヴァイオリンさんがお感じになり、経験された同じことをレベルは全く異なりますが、2回ほど感じるヴァイオリンがありました。ドレスデンの160年くらいの経年のモダンと100年くらいのモダンイタリアンでを、音量も不足・音程も取りずらいVんをプロのヴァイオリニストが痛く気に入っておられたことを思い出しました!
YUKA (Friday, 19 July 2019 19:21)
初めまして。
音楽よりもヴァイオリンという楽器そのものに興味があり、これまで何回か買いなおし現在は200年前のイギリス製に落ち着いています。
大変勉強になります。